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久々に実家に集まった鈴木(すずき)家の息子達は円卓を囲み、中心にあるせんべいに手を伸ばしていた。
「おい、冬嗣(ふゆつぐ)。お前はどうしてそんなに要領が悪いんだ。だから馬と鹿を書いて冬嗣と読むんだよ」
平然と言ってのけたのは高等部2年生の三男、秋名(あきな)だ。
サラサラと触り心地がよさそうな黒髪、少し垂れた目…この普通の少年に優しそうな印象を与えているが中身は真逆だ。
羊の皮を被った狼どころか悪魔である。
「バカって読むんだよ!秋兄は俺の様子を腐男子の友達と楽しんでるんだろ!?」
口を開けて反論するのは高等部1年生の四男、冬嗣。
一重で地毛が茶色く少し傷んだ彼はとてもお人好しだ。
「黙りなさい、愚弟冬嗣。私の締め切りに間に合わない」
眼鏡を押し上げ、パソコンをカタカタと打つのは長男、春行(はるゆき)。
雑踏に紛れそうな容姿をしているが、ピンとした背筋に着物姿はぴったりだ。
私立暁原(あきばる)学園高等部の副理事長秘書でもあり、そして若くして奇跡の文才と讃えられる小説家でもある。
「春兄…!なんで俺だけ愚弟!?」
「噂は聞いている。それに比べて秋名は上手く生きているじゃないか。夏芽(なつめ)、寝るな。そして四季(しき)は宿題をやりなさい。折香(おりか)は…いないか」
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