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アメリカ合衆国、ネバダ州――1台の砂色の米軍多目的車両HMMWV(ハンヴィー)が、闇夜の砂漠をひた走る。
しばらくしてHMMWVのスピードが落ち、ヘッドライトに照され闇に金網のフェンスが浮かび上がる。
[危険:高圧電流!]
HMMWVが停まるが、周囲にはそのフェンスで囲まれた通信施設とおぼしき小屋以外、ただ砂漠が広がるばかりだ。
停車したHMMWVの運転席から爬虫類の鱗のような模様のクリプテックス社の迷彩が施された米軍の戦闘服を着た小柄な……いや、シルエットからして女性兵士が降り、フェンスに近付く。
『パスワードを述べて下さい。IDの確認を行います』
小屋に取り付けられた音質の悪いスピーカーから、抑揚の無い声が響く。
「K2,ジョンストン」
女性兵士は胸ポケットからIDカードを出し、フェンス上の監視カメラに向ける。
監視カメラに映し出されたのは、美しい漆黒のストレートヘアに細い眉。切れ長な二重瞼に黒曜石のような透き通った黒い眼。きめ細かい白い肌に赤いぷっくらとした唇が可愛らしい、美少女コンテストに優勝しそうなくらい清楚で整った顔立ちの東洋人女性の顔写真。もっとも、軍服を着た本人は長髪を帽子の中でまとめているのだが……。
米兵のオペレーターがPCにIDの名前と女性兵士が述べたパスワードを打込む。
[ID確認中……]
PCのモニターにカラフルな線が表示され、モノクロに映るIDの顔写真と本人の映像の照合が行われる。
[パスワード、ID確認完了]
『確認を完了した。入れ』
女性兵士はHMMWVに戻るとフェンスがスライドして小屋がせり上がり、駐車スペースが現れる。
女性兵士はHMMWVを小屋の下の駐車スペースに入れると、地上の小屋は再び下がって元の位置に戻るが、HMMWVを載せた駐車スペースはは更に地下へと潜って行く。エレベーターになっていたのだ。
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