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 そう言うと、ダイスはソフィーに刺繍が完成したスカーフを被せた。 「糸と糸を繋いでいると、絡まる事がある。そして、玉を結ぶ」  そして、ダイスはソフィーの御腹に触れる。 「其の花は君と、彼と、此の子への贈り物」 「この、子」 「布、売りなよ。少しは生活の足しになる。無理しちゃ駄目だよ“御母さん”」  ソフィーがスカーフを退けて顔を上げた時、ダイスは既に其の場には居なかった。  糸を通した針が、身体を突き抜ける。幾つも幾つも、身体を突き抜ける。  糸は血で紅く染まり、けれども其の先で誰かと繋げてくれる事は無く。  ただ、痛みが広がるのみ。 「……う?」  其処で、社長は目が覚めた。目の前には心配そうな顔をしたドリスの姿。 「社長、大丈夫ですか?」 「えっ、あっ、僕、何日寝てた?」 「何日って、一時間ぐらいですよ。部屋を出た先で倒れていて……」  見渡せば、見慣れた社長室。服はいつものスーツ。全てが夢だったのかと荷物を漁れば、減った糸と消えた布が名残を残していた。 (夢、じゃない。でも時間は経って無い。……僕の時間軸どうなってるんだ?)  混乱する中、廊下から子供の声がした。  ドリスと一緒に見てみると、同じ顔をした二人の女の子が走っており、其れをシエイエスが追い掛け廻している。 「副社長! 仕事場に子供を連れては駄目でしょう!!」 「済みません、直ぐに帰らせます! ほらお前達!!」 「良いんじゃないかな、僕も昔よく出入り……」  其処で、社長は言葉を止めた。視線の先にはシエイエスが双子から取り返そうとしている、紅い指輪。 (……世間って、狭いね)
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