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少年は今度は何処に仕掛けて誰を嵌めようと、善からぬ思考で辺りを見回す。
相変わらず薄暗く気味の悪い森だが、もはや自分の庭と化している少年には見慣れた風景だ。
「……ん?」
そんな中、見慣れない真っ白い何かが視界に写る。其れは暗い森で目立ち、まるで浮遊霊の様に浮き彫りになった姿で動いている。
(な、何だ!? まさか、幽霊!?)
白い影を警戒をしていると、不意に其の影が此方に近付いて来た。
「ひっ!」
思わず腰を抜かす少年。白い影はゆっくりと、静かに近付いて来て、充分近付いた後、口を開いた。
「稚児や、稚児。どう……しました?」
真っ白い服を身に纏い、真っ白い仮面を身に付け、真っ白い髪が垂れ下がり、真っ白い肌を持つ、人間の姿をした者。
其れは少年の目線に合うように屈み込むと、仮面越しに彼を見詰める。
「ひっ、近寄るな幽霊!」
「失敬な。私は、死んでいません」
そう言って、白い影は白い手を伸ばすと少年にデコピンを咬ました。“いてっ!”と軽く悲鳴を上げる少年。
「稚児や、名前は?」
「やだ。お前から名乗れ!」
「私、ですか? 私はア……」
其処で、不意に言葉を呑む白い影。
「……ア? アってなんだよ」
「……アジャラ」
「ん?」
「アジャラと、御呼び下さい」
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