『戦火の炎』

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紫電によって形成された青白い鎧。 一切の屈曲のない流麗の装甲がエレンの左肩を覆っている。 それ以上に目を奪われるのが、彼女の左手に持つ――否、彼女の左腕全体で支えている、その出鱈目に大き過ぎる砲身だ。 構造だけ見れば対戦車用兵器――RPG-7と類似しているが、彼女が持つソレは一回り大きい代物であった。 純銀で覆われた砲身全体に雷の属性を宿しているからか、彼女が具現されたその異質物は蒼白い光を放っていた。 「グラン……デウス」 張り詰めた声で呟いたクロノに、エレンは歓心を得たような表情を見せた。 「――ほう。〝こいつ〟を知っているとは流石だ。ならば、コレが齎す威力も承知している筈だな」 知らない奴はまだ幸せな方だ。 《グランデウス》と呼ばれる砲銃は、本(もと)は城壁や分厚い大門を破壊する攻城兵器を編み出す為だけに作られた大量破壊兵器だ。 砲身全体が紫電を纏ってスパークを放出している。 攻城兵器に必要なファクターは、強固な壁や門を破壊出来る程の、速力と威力を兼ね備えた〝衝撃力〟だ。 即ち、最速を誇る、雷を媒介とする覚醒者が独力で生み出された――能力においては《インフェルノ》と同等の性能を発揮する域にある。 しかし、アレを持つ資格があるのは、現時点で《電神の鉄槌》以外に他ならないのだが。 「こいつを扱うのは久々なんでね。貴様を倒す前に、試し撃ちでもしておこうか」 「なんだと」 命の奪い合いの最中に、そんな悠長な事を言うエレンを不愉快に感じたクロノだったが、その挑発的な言葉の真意に気付いてはいなかった。
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