それは今から二年前の話

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今回の戦場は、とある町だった。たまたま両軍が出会ったのがそこだったというだけの悲劇。 『終焉』には、絶対に守らなければならない規則があった。それは、殺しをしないこと。 少女の両親を殺したのが、『終焉』なのか両軍のどちらかなのかは分からない。 ただ、今はまだ十四歳の少年少女である『終焉』は、その日、人の死体を始めて見たのだった。 「どうしたの?」 どうしたのかなんて、分かりきっているのに、オレンジは少女に聞いた。 「お父さんとお母さんが…………」 少女は『終焉』と同じくらいの歳だった。だから、ある程度死に対する知識はある。 「俺たちの……せいかな?」 「そうじゃないと、信じたいわね」 誰のせいかと聞かれれば、それはおそらく戦争を始めた両軍の指揮官等になるのだろう。 だが『終焉』は、幼かった。戦場に出るには、幼すぎた。目の前の死を、受け止めきれなかった。 『終焉』は少女の両親を、少女と共に埋めてやり、その場を離れた。 少女の名は、鳴亜・ルルシア。それを聞くと少女は死んだように眠り、次の日には、声と、両親が死んだ時の記憶を失っていた。 『終焉』は戦場を離れること、鳴亜が失ったものに対して責任を感じ、面倒を見続けることを誓い、武器を置いた。 その日より、戦場で『終焉』を見た者はいない。
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