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「藍、みぃ。鳴亜は?」
「庭」
「さんきゅ」
ブルーというコードネームだった少年、葵路神凪(ニックネーム、あお)は、少女鳴亜の面倒を見続けていた。
声を失っただけで言葉が分からないわけではないし、最初の頃こそ無表情だったが、今では四人の中で一番表情が変化する子になっている鳴亜。
その鳴亜に、あおは随分とご執心だった。
「どうした鳴亜。庭に出てるなんて珍しいな」
あおに呼ばれ、鳴亜はあおの姿を確認。とたんに表情がパァッと輝く。
(あお……!!)
鳴亜は喋れない代わりに、念話か筆談で会話する。
鳴亜は一瞬悩んでからある一点を指差す。その先にあるのは、学校だった。
「行きたいのか?」
頷く鳴亜。あおは困った表情をする。
(ダメ?)
中々、ダメとは言い出しにくい雰囲気の中、かつてのパープル、紫道藍華(ニックネーム、藍)が庭に出てきた。
「それくらいなら、なんとかなるんじゃない?」
「そうは言ってもだな……」
難色を示すあお。彼は、過保護なのだ。
「まあまあ。私に良い考えがあんのよ」
「…………」
そこはかとなく不安な、あお。藍の言う良い考えが、本当に良い考えだったことはただの一度もなく、そのたびに苦労するのはあおかかつてのオレンジだったからだ。
ただ、鳴亜の希望に満ち溢れた目を見て、あおは何も言えなくなった。
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