佐々木はるか

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「じゃあ、私はタクシーで帰るから。また一緒にご飯食べましょう」 杏奈ちゃんは、終電の時刻が過ぎてしまったため、タクシーで帰ることになった。 「うん。杏奈ちゃん。今日はありがとう」 少し足元がおぼつかない杏奈ちゃんがタクシーに乗り込み、バイバイする。 杏奈ちゃんを見送り、時計を見てみると、ぎりぎり終電にはまだ間に合いそうだ。 私は駅の方角に向かって歩こうとした。 ぐいっ 突然、後ろから左腕が強く引っ張られる。 私は戸惑いながら、振り返った。 「あれー!やっぱりそうだ!さっきの子じゃん!」 腕を引っ張ったのは、杏奈ちゃんと待ち合わせをした時に話しかけてきた男の人だった。 「こんなとこで再会。これって運命じゃね!?ぎゃはははは」 強く握り締められる腕。 男の人からはお酒の匂いが漂ってくる。 見てわかるほど、明らかに泥酔していた。 「誰ー?誰ー?」 私の腕を掴む人に群がる数人の男達。 「さっき駅で声かけたんだけどさあ、邪魔が入っちゃってさあ」 男の人は周りにいる友達に、ぎゃははと高笑いしながらそう言った。 「あれ?一人?お友達はどうしたのお?」 喋る度に漂ってくるお酒の匂い。 男の人は、私を見ながらニヤリと笑った。
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