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「ねえ、ちょっと遊びに行こうよ!カラオケとかさ!俺、ショートカット大好きなんだよお」
ニヤリと笑う男の人は、私の腕を掴んだまま、さらにぐいっと引っ張った。
「い、いえ。私、帰ります」
やっと出た声は少し震えている。
私の中には、一瞬にして恐怖が蔓延していた。
怖い。緊張感からか、体が硬直し始めてうまく声が出ない。
「大丈夫だって!そんなに怖がらなくても!何もしないからさ!ぎゃははは!」
泥酔しながら喋る男の人はそう言いながら、私の腕を強く握り締める。
すると、周りにいる男の人達も泥酔した様子で口を開いた。
「本当かよー。何もしないってよ!こいつ、この前なんてさあ」
同じく高笑いをする。
恐怖は限界まで高まり、私は思わず掴まれていた腕を強く払った。
その直後、走り始める。
「ちょっと待ってよ!待てって!おい!」
背後から聞こえてくる声。
怖い。
後ろから迫ってくる足音。
周りにいる人に助けを求めればいいのに。
私は声を出すことも出来ずに、とにかく走った。
「おい!待てよ!」
背後からは、男の人達が追いかけてくる。
どうしよう。どうしよう。
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