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10年前、俺は理由も解らず剣道をやっていた。物心がついたときには手に竹刀を持っていた。
今の時刻は既に9時を過ぎている。普通の子供ならもう眠ってもいい時間だ。だが今はそれを許されない。父が側にいる。少なくともその間は休むことを許されない。
汗が一滴睫を抜けて目に入る。その刺激にちょっとだけ目を瞑り、すぐに開けて素振りを行う。まだかまだかと思う内に父から声が掛かる。
父「よし、今日はこれで終了だ。しっかり休め。」
それだけ言って道場を出る。俺はそのまま疲れて仰向けに倒れる。床がひんやりと冷たかった。時計を見るともう直ぐで10時になる。流石に汗にまみれたこの状態で寝てしまうと風邪をひいてしまうのは目に見えているので、だるい体を必死に起こし風呂に入る。体を拭き、部屋に入るとベッドに倒れ込み数秒後には意識が無くなっていた。
次の日、いつも通りに6時に起きジョギングをしていると1人の着物を着た女の子と会った。道に迷っていたようだった。見かねた俺は思い切って声を掛けた。
零「大丈夫?」
?「え、だ、誰?」
彼女はとても慌てた様子で俺を見た。それにつられて俺も慌ててしまう
零「あ、ご、ごめん。急に声掛けて。なんか困ってたようだったから…。」
?「あ、ううん、大丈夫。ちょっとびっくりしただけだから。」
零「どうしたの?」
?「道に迷っちゃって…。」
零「へ?」
道に迷ったと言われて俺は間抜けな声を出してしまう。なぜならこの辺一帯は道が大きく、見晴らしがいいので道に迷う、なんて事は殆どないのだ。
零「家はどのあたりなの?」
?「解んない…。」
道に迷ったというんだから家が解らないと言うのも当然だった事に今更ながら俺は気付く。
零「じゃあ俺も一緒に探してあげる。」
?「え?」
突然言われたので頭がついていってないのだろう。彼女は戸惑っていた。
零「俺も一緒に探すよ。」
?「あ、ありがとう!」
笑顔で言った彼女の顔は可愛く、俺は思わず赤面した。思わず顔を背ける。
?「どうしたの?」
零「な、何でもない!行こう!」
俺が先に歩き始め、少女が後ろから付いてくる形になった。
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