11904人が本棚に入れています
本棚に追加
/716ページ
紅茶色をした少年の髪が、さらりと靡く。
(何故だ…………)
その外見に驚愕の顔を浮かべるマティアスは、俄かに信じられない。
(まさか…………)
反面、その脳は意外な程冷静で、記憶を遡りながら答えを導き出していた――…
…――バルテウスでの精密検査を頑なに拒んでいたシャルロッテ。
『自分の命より大切なものを見付けたからだ!』
彼女の瞳の奥にあった、揺るぎない決意の眼差し。
カイザーとミリアンが首を傾げながら話す、突然現れたという不思議な少年。
『そいつはお前と同じように結界に触れ、更に穴まで空けた。その後は、まるで風のように消えちまったよ』
少年に秘められているであろう未知の能力。
マティアスは悟った。
もし"そう"だとしたら、パズルのピースが埋まるように全てのつじつまが合う。
他人とは思えない筈である。
何故なら、おそらくこの少年の正体は――…
.
最初のコメントを投稿しよう!