天使の訪問

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    体中がだるい。 内側には熱をもっているのに、肌寒い。 喉の奥には拭いきれない異物感。 くらくらする頭。 風邪をひいたのだと、医者じゃなくたって分かった。 最近、暑くなったかと思えば急に涼しくなったり、天気予報を見逃した自分が悪いのだが、突然の雨に打たれたり。 その日の疲れをリセットしきれないまま、ろくに休日にも休まずに過ごした。 疲れを日々蓄積させてきたんだ。体調を崩してもなんらおかしくはない。 夕飯を作るのも食べるのも気力が沸かず、それじゃいけないと頭で思いつつも体はついてこなかった。 ぼふり、とベッドに倒れ込む。 こういうとき、一人暮らしは不便だと心底思う。   いまは、体調を崩している場合じゃない。 どうにかしないといけないと思いつつも、一度横たえた体は鉛のような重さで起き上がるのを拒否した。 ――ぴんぽーん。 間の抜けた、良く言えばかわいらしい音でインターホンが鳴る。 居留守を使ってやろうかと思ったが、もしかしたら心配した友達が来てくれたのかもしれない。 縋るように、ベッドからうつぶせのまま手を伸ばし、電話の受話器をひっつかんだ。  
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