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訝しげに報告する隊士に少々申し訳ない気持はあるが・・・俺が、鬼の副長と恐れられているこの俺がガキを背負ってる姿を隊士に見られるくらいなら、原田と腹踊りした方がマシだ。
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「土方さん」
数日後の夕方、平助が障子を開けて顔を出すと
「てめぇ、周りに気を付けてから障子を開けろよ」
「すっかり土方さんの子みたいだ」
と話を全く聞いていない平助が、俺の背で眠るガキを見て感心する。
「感心してねぇで代われ」
「無理無理!土方さん以外ダメだもん」
と手を振って答える平助が可笑しそうに笑うが
「でもさ、誠士郎負ぶってる日っていつも平穏だと思わない?」
と言うと
「確かに・・・そうだな」
こいつを背負ってる日は大きな騒ぎは起こらない事に気がつく。
「平穏な日が続くっていい事じゃないのかな?そんな日・・・新選組になってから数えるほどしかなかったし」
と平助が寝ているガキの鼻をちょんっと突き
「あぁ・・・確かにな。だがそれでは新選組は用なしになっちまうよ」
そう言って笑う俺だが・・・ガキを背負って書類整理をするのが日課となってしまうことなど、この時は露ほどにも思わないのであった。
**END**
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