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私はその手紙を黙読してみる。
そこには差出人不明の謎の相手からの友達のお誘いがあった。
「……やっぱり知りませんけど」
なんか違和感を感じる手紙だった。
――だけど私じゃない。
「そ、そうか。ど、どうすれば良いだろうか……」
五木さんは頭を抱え込む。
どうしてそんなに悩んでいるんだろう?
「どうするって……。文通ぐらいしても良いんじゃないですかね。深く考えることありませんよ」
私は面倒臭いので彼を適当にあしらった。
どうせ誰かの悪戯だと思ったから。
私はデスクの引き出しから、こっそりと飴玉を取り出し口に放り込んだ。
それを舌で転がしながらふと考える。
……でも、いまどき手紙なんて珍しいよね?
――あ! そうか、携帯のアドレスが分からないからか。
でもそれなら、本人に直接聞けばよいのに。
もしかして手紙の相手は、恥ずかしがり屋さんなのかな?
――五木さんに恋してるとか?
いや、いや。
それは流石にないか。
五木さんはボサボサの髪で糸目。
声も異様に高い。
お世辞でもモテるような風貌とは言い難いのだ。
私は彼に目をやった。
五木さんは私を標的から外したらしく、次に出勤してきた男性社員に声をかけ始める。
――五木さん今日はお喋りだな。
これもまた珍しいことだ。
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