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自分と同じ髪色を持ち、自分の愛する者の翼を生やした小さな命を抱きながらニールスの男は言うのだった。
「ルカ、その子に名前を……」
男の妻であろうその女は、遠く聞こえる小川のせせらぎの如き澄んだ声で言う。
「そうだな」
『ルカ』と呼ばれたニールスの男は、少しばかり「んー」と考える素振りを見せ、やがて思い付いたかの様に開口する。
「よし! 今日からお前は『ラロ』だ!」
にっこり笑い、両手で赤子を高々と掲げる。それに応える様に『ラロ』と名付けられた赤子も、愛らしい無垢な笑みを見せた。
まだ、これより自身の辿るであろう運命も知らず……。
この時――いや、もっとそれ以前に、この赤子『ラロ』と一人の少年との出逢いは運命づけられていた。それは、偶然の産物ではなく【予言】というひとつの名のもと。
だが、その全てを語るのはもう少し後の話……。
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