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ルサルカが疲れて店に帰ると、部屋は真っ暗だった。
ディノはまだ帰っていないようだ。
取りあえず、荷物を置こうと部屋に足を踏み出したとき、ルサルカは何かに躓いた。
ガッシャアアアアン!!!
と、盛大に転ぶ。
何かが確実に割れた音がした。
「――ッ~!」
声にならない悲鳴を上げ立ち上がり、涙目で明かりをつけた。
床に無造作に転がっている空の酒瓶の山。
むしろ海か。
床板が見えない程の量だった。
そのうちの二本が割れていた。
これでは転んで当たり前だ。
ルサルカは憤慨しながらも、まず片付けなくてはまともに部屋に入れないので、片付け体制を整えた。
「おう、遅くなった。大丈夫だったか?」
ディノはそう言いながら、ドアを開け、口を閉ざした。
そこには、自分の家とは思えない光景があった。
床がある。
机の上に何も乗っていない。
少年が倒れている。
「……って、オイ!ルサルカ!しっかりしろ!」
ディノは急いで駆け寄って少年の肩を揺さぶった。
少年は、はたと気付くと、やつれた顔に力なく笑みを浮かべた。
「こんなに掃除したのは、初めてかも……しれ、ま……せ」
ぱたっとルサルカはそのまま気を失った。
「ルサルカ、おいっ」
返事がない、ただの屍のようだ。
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