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でも。
その結果が、あの傷である。
そう思いながら、柚木は刺された場所を服の上から押さえた。
別に、新見じゅえるの母親だけが問題ではない。
毎年、どのクラスを受け持とうが、問題のある子は必ずいた。
そして、そんな子の親達は、たいてい何らかの問題があった。
毎年、そんな親子に出会うたびに、「できるだけのことはしよう」と思って努力してきた。
けれど、感謝されることはまれだった。
大概は、罵声や侮蔑の言葉をかけられ、悪く言われるのがオチだ。
それでも、柚木は自分にできることはやってきたつもりだった。
でも、その果てにあるのは、空しい空虚な気持ちだった。
そのことを、ずっと見ないふりをしてやってきた。
千華子が教員を辞めた時も、悪いとは思いつつも、表立って庇うことはしなかった。
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