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だから。
辞めてしまおうか、と思ったのだ。
これはけっこう本気で考えた。
教員を辞めた後のことは不安だったが、それでも、このまま報われない思いを抱き続けるよりは、はるかにマシに思えたのだ。
ただ。
そう決めた瞬間に思い出したのは、教員を辞めると自分に告げた時の、千華子の表情だった。
あの時。
確かに、千華子は苦しそうだった。
けれどその瞳は、決して諦めていなかった。
教員を辞めることで、千華子は前に進もうとしていた。
そうして。
そんな時に、柳瀬から連絡があり、千華子が学童の仕事を引き受けてくれた、と教えてくれたのだ。
その知らせを聞いた時、自分はどうなんだろうか、と柚木は考えた。
今のまま、空虚を抱えながら仕事を続けていくことはできなかった。
だけど、そのまま辞めていくことは、何か違うような気がした。
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