祭りの終わりは突然に

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「さあ! 二人まとめて相手をしてやろう。どこからでもかかって来い!」 龍人が口を開くより先に、柳生が言った。 「……おい。邪魔だ」 「何を言う。邪魔をしたのはそちらではないか」 「聞こえねぇのか。邪魔だって言ってんだ」 「ふん! 貴様の睨み程度で私が臆すると思ったか? さあ、大人しく投降しろ。そうすれば痛い目に合わずに済むぞ」 と自信満々にヴェルバータが言った直後。 ばきっ。ドカンッッッ!! 彼の姿が視界から消え、そのすぐ後に轟音がした。 この時、客席で見ていた生徒達は今の一瞬、何が起こったのか分からなかった。 彼らが気付いた時には、ヴェルバータ=アミダロンの姿はなく、代わりに片腕を横に大きく振り出した格好をする襲撃者が立っており。 そして、電光掲示板横の巨大モニターが、不自然にひび割れていた。その中心部分の穴からは、人間の片足が垂れ下がっている。 「……あ、しまった。つい力んじまった」 悪びれる様子もない平坦な声。 柳生は広げていた腕をそのまま上に持っていき、掌を巨大モニターにかざす。 「まあいいや。とりあえず──消え失せろ」 聞き取れないほどの声量で『鴉』が術を唱える。 直後、彼の手からピンポン玉ほどの青白い球体が発射され、それが放物線を描き、巨大モニターに着弾すると── 何十倍にも膨れ上がり、強烈なスパークと共に縦一〇メートル横三〇メートルはあった建造物が崩壊した。 巨大怪獣に食い潰されたと言っていい。円形だった闘技場にぽっかりと穴が開き、そこにボロボロの瓦礫が山積りになる。さらに軽い地響きが生まれ、舞い上がった砂煙が風に乗って飛ばされる。 そこまで起こって、ようやく……彼らの防衛反応が機能した。 「うっ──わああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」 「きゃぁぁあああああああああああああああ!!」 甲高い悲鳴が、いくつも上がった。今になって『恐怖心』に駆り立てられた生徒達は出入り口に詰め掛ける。 そこに火事の時などに使われる『おはし』のルールや周囲への気遣い、譲り合いなどは一切ない。我先にと、自分だけは助かるんだと周りの人を押し退け、足蹴にして逃げようとする。何人かは群衆に突き飛ばされて階段から転げ落ちたりしていた。
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