祭りの終わりは突然に

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そして腹を括った龍人が駆け出そうとしたところで、 「フッハッハッハ! そこまでだ!!」 と、拡声器からそんな声が聞こえたかと思うと、空からまた誰かが振ってきた。 二人の間に着地したのは片手にマイクを持った白スーツ姿の男。英明館学園の治安維持委員会(エリア・セイフティ)顧問であり、自称天河崎輝の婚約者である彼の名は──。 「我がハニーにすべてを注ぐ愛の戦士、ヴェルバータ=アミダロン。 今、ここに参・上っ!!」 「「………」」 きっと幼稚園生が見れば『ちょっと格好いいかも』と思うような決めポーズをとってそう叫んだ。しかし二人の反応はとても薄かった。冷たかった。ディッシャーで抉られるアイスクリームのように、二人の中で何かが削ぎ落された。 「ここからは私の独壇場だ! これ以上貴様らの好きにはさせないぞ!」 「……先生、下がっててください。こいつは──」 「神聖な闘論会を汚す下郎が私に意見するな! すべて分かっているんだぞ」 龍人に何故か罵声を浴びせる愛の戦士は、決め打ちのように言った。 「貴様とそこの男は、グルなのだろう」 「……え?」 「しらばっくれようとしても無駄だ。貴様は、ウチの扇桐昴が相手では自分達が手も足も出ないと踏んで、だから真っ暗な空間を作り、二人がかりで打ちのめす計画を立てたんだ。運よく防御結界は破壊できたようだが、離脱には間に合わなかったようだな」 「……、」 「神の目は誤魔化せても、私の目は誤魔化されないぞ! どうせハニーの反対を押し切り、強引にこのような真似をしたんだろう。薄汚い連中め。元王下騎士団三番隊隊長である私が、直々に成敗してくれる!」 名探偵も驚くような迷推理を披露したヴェルバータは、マイクを投げ捨て、魔武器(アーム)である大きなランスを召喚し構える。 呆れてものも言えない。 龍人は思った。この男は声を大にして何を言っているのだろうか? まさかとは思うが、大人達の対応が遅いのは彼の言ったような妄想をしているからじゃないだろうな、とつい心配してしまう。
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