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嫌い、と言っている割には蘇平に見せる表情も態度も親しみが込められている。本当に嫌ってはいないのだと美瑞は理解した。
「さあ姫さん、あんま外にいると冷えるぜ?中に入ろう」
そう言って羅耶(ラカン)が手を差しのべてきた。
「どうせお前が暖まりたいだけじゃろうが」
羅耶を軽く睨みながら蘇平も手を差しのべてくる。
美瑞はどちらの手を取るか一瞬躊躇するが、やがて笑顔で二人の手を握った。
「二股か、姫さん」
「え!?」
驚いて顔をあげれば笑いながら羅耶が冗談を言う。
蘇平は大きなため息をつき、朗らかな日に相応しく小鳥が小さく鳴いた。
王位に就く気はないけれど、頑張ろうと何故か思えた。
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