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「……あー、あれじゃないか?片桐、数学だけは苦手だから、その数学担任も嫌みたいなさ」
志摩がさりげにフォローする。
だが、その言葉に国見が肘をついて遠い目をした。
「いや、こないだ教室での会話が聞こえたんだが…」
『私、国見だけは生理的に嫌いだー』
『え?なんで?志摩先生ほどじゃないけど、そこそこ話しやすいよ?』
『いや、どうみてもあいつは胡散臭いでしょ。裏で何考えてんのか分かんない』
「って言ってたんだ」
「…決定打」
「はあ、俺はなんでそこまで嫌われたんだろうな」
「まぁ~、さ、教師なんて皆がみんな好かれるわけじゃないからな~。むしろ嫌われる」
男女共に好かれている男から言われても、説得力はない。
教師になってまだ5年だが、ここまで人に嫌われたことは初めてだ。
国見は、この年、クラスを持っておらず、教科担任として3クラス授業を行っている。
梨奈と会うのは週に4回ほど。俺はいったい、彼女に何をしたんだろう?
国見は、本日3度目のため息をついた。
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