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少女は走っていた。
腰まである漆黒の髪を靡かせて
膝まである新緑のコートをたなびかせ
土色のブーツで大地を蹴り
その腕に桃色の織物を持ち
口から荒い息を吐きながらも
黒縁眼鏡の奥の翠の瞳は
森の奥の更に奥を
自らの安住の地を目指していた。
背後は決して見なかった。
背後には数十人もの追手が居るからだ。
ショットガンを持つ人間
狼の様な耳を生やした獣人
魔法を放ち襲う魔族
彼ら彼女らが集い少女を狙う。
ショットガンで牽制したと思えば
足元を魔法で崩されかけ
よろめく隙に鋭い爪で引き裂こうとする。
それでも少女は走っていた。
もう少し……
もう少しで……
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