自覚

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「柚梨奈」 甘えるように、今度は優しい力で抱きしめる。 だけど声は鋭かった。 「あいつの言ったこと一つも当たってない?」 一瞬生まれる緊張感。 “痛くないの?苦しくないの?” 野木の言葉が耳の奥に反響する。 「当たってないよ。全部ハズレ。私は隆也と…」 唇を塞がれる。 前に野木の前でしたものとは違う、二人だけのキス。 誰に主張するわけでもないのに、愛情とか、独占欲とか、嫉妬が目に見えるのではないかというくらい熱がこもる。 「ん…っ」 柚梨奈はそれに応えながら思う。この主張は自分に向けられているのだと。 ならば彼を安心させるためにも自分の気持ちもいっぱい込めなければ。 だけど…。と冷静な自分が顔を出す。 その時、この熱を帯びた唇から、自分の中の疑問まで伝わってしまったらどうしようと心配する。 “痛くないの?苦しくないの?” それは隆也にこそ聞きたかった。 私といてあなたは… ずっとずっと聞きたかった。 でも怖くて出来ない。
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