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「じゃ、帰るね」
「泊まっていけばいいのに」
時間が経ち、完全に夜になってしまった。
靴を履く柚梨奈に一度断られた隆也がまた誘う。
「ダメだって。明日も学校早いし、急だとお父さん怒るし」
「あー…パパね。なんとなく俺嫌われてる?」
「あはは、あれはヤキモチ」
「ヤキモチね…」
その言葉を隆也は噛みしめる。
「今度うちにもおいでよ。悠斗も遊びたがってたよ」
「うん、行く。…でも次は2人がいいなー」
明るく笑う。まるでさっきまでの緊迫感を忘れさせるかのように。
「久しぶりに今度の休み二人きりではゆっくりしよう。な?お父さんにも許可取ってさ」
「がんばってみる」
柚梨奈は苦笑する。
「じゃあ約束ね」
「うん」
隆也の調子に合わせて素直に頷く。しかし
「柚梨奈。約束、だからね」
低い声。
それがなんの約束を示しているのかはすぐに分かった。
だけど、動揺なんてしない。
「うん、わかった」
もう一度頷く。
それしかできなかった。
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