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「総司っ!」と原田が何かを言いかけたが、土方がそれを手で制し自らが口を開いた。
「連れて来ちまったのは俺だか、総司の言う通りオメェは不可解すぎる。一体何者だ。」
張り詰めた空気の中、俯く結愛。
暫く沈黙を続けた後、ゆっくりと顔を上げ、土方を真剣な眼差しで見つめる。
そして小さくため息を吐き、結愛は話始めた。
「信じて貰えるか分かりませんが、今から話す事は全て本当の事です。
私自身こんな事になって、正直どうすればいいのかすら解りません。話を聞いても納得できなければ斬って下さい。」
!!!!!
結愛のあまりにも淡々とした言葉に皆、一様に目を見開き、土方だけでなく、
結愛に敵意を剥き出しであった総司までもが、表情には驚きが隠せないでいる。
こいつ…、何で怯えてねぇんだ。まるで、死ぬ事なんて恐くねぇって顔してやがる……。
そう感じたのは、土方だけではなかった。
皆の目に映る女は、まるで殺してくれと言っている様に見えてならなかったのだ。
「………分かった。取り敢えずお前の話を聞かせてくれ。嘘偽り無く。」
土方はそう言うと、皆を座らせ、斎藤に山南を呼びに行かせた。
暫くして、斎藤と山南も揃うと、静まり返った部屋の中、結愛がしっかりとした口調で話し始めた。
「私は、観月結愛といいます。
私は昨日、亡くなった家族の墓参りをする為に、今で言う江戸から京に来ました。
お墓に着いて暫くすると、大きな地震が起こって、目が眩む様な真っ白な光に、辺りが包まれたんです。
私は暫く気を失っていましたが、気がついた時には周りは見た事もない風景に変わっていました。」
困惑の表情を浮かべる一同に結愛は少し微笑み
「これでもまだ半分位です。言ってることが解らないでしょ?もう斬りますか?」
と総司の顔を見る。
総司には結愛が嘘を言っている様には見えなかったが、微笑む瞳の奥が、既に死んでいる様に感じて言葉を失う。
そんな総司を察した土方が
「いや、最後まで聞かせてくれ」
と結愛を促すと、結愛は一瞬がっかりした様な表情になったが、すぐに真剣な顔に変わり話の続きをはじめた。
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