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「はぁぁぁ……」
ばんっ!
結愛は最後の客を送り出し、黒服達が後片付けや掃除をする為、営業中より照明が明るくなった店内へ戻ると、ソファーに倒れ込んだ。
だだだだだっ!!!
「結ぅー愛ぇーさぁーんっ!」
ばふぅ!
「ぶげェッ!!?」
ボロ雑巾の様にくたびれ、ピクリとも動かなかった結愛に、激しすぎるテンションで走り寄り、『ぎゅうぅ』と、覆い被さる女。
「…てぇ…めぇ……殺「お疲れっす!!今日も売り上げまじスゲーっすよ!さすが結愛さんっす!私、一生結愛さんに着いていきまッ……ゴフッ!?…」
女をひっぺがし、女の顔面を掴んで頭突きを一撃入れた結愛。
「……ぅ……ぐ………!!!」
鼻から血を垂らし悶絶する女を気にせず結愛は無言でムクリと立ち上がると、一部始終を心配そうに見つめていたオーナーの元へ、フラフラと近づき口を開く
「田中!」
ビクッ!
「は…はいッ!」
田中は姿勢を正し、伏し目がちで結愛に向き合う。
結愛は、アルコールにより据わる目で田中を見上げながら、客と話続けて掠れた声で言った。
「前から言ってるけど、明日から1週間休むから。お客さん達にも言ってあるし。だから泣いて電話してこないでよね。解ってるよね……」
田中は結愛を1日も休ませたくない。
「ヒッ…!?」
だが六本木No.1の結愛を引き抜こうとする店は数多あり、結愛のご機嫌も取っておかなければ他店へ…!?
「…返事は……?」
なんて心配もあるので、一先ず休むことを了承。だが夜には必ず、結愛の客が来てるから出勤してくれ、と電話をかけ続けるのだ。
強気には出れないので、
泣き落とし。
「も…もももも勿論だよ!
結愛さん!ゆ…ゆゆゆっくり休んでよ…!」
威圧感たっぷりの目は幻だったのかと思う程、結愛の表情がぱぁっと明るくなり
「ありがと~!じゃ、送りの車いらないからもう帰るね!
莉緒~っ!いつまで寝てんの?
優希ぃ菜々ぁ~、遥ぁ~!
早く!さっさと着替えて行くよっ!あっ、田中さんっお疲れっ!」
「はい……。
みなさんお疲れ様です………。」
結愛が仲間と帰った後、なんとか出勤させる手を考えるが、翌日には着拒されている哀れ田中、35歳。
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