第三者

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 朝日が体を照らしている。その眩しさと明るさに慣れたころ、校門が見えてきた。眠気と闘いながら門を過ぎる。目の前の本館の時計を見ると時間は8時20分。余裕とはいかないが問題ない時間だ。  教室へ向かう階段をのぼりながら今日一日の計画を立てる。一限は日本史か。今日はいつもと違い、予習をしてきたので気が楽だ。寝起きの感覚が残っていたのもあり、午前の計画は睡眠に決まった。教室の後ろの扉を開け、にぎやかな声の中に入る。友人と目が合ったが互いに適当に笑みを交わし、後ろの扉に最も近い自分の席に座った。ここはまず寝てもばれない、いい席だ。  朝のホームルームが始まり、担任の先生が連絡を伝え始めた。いつも思うが頭が働かない朝より昼に連絡をした方がいいのではないだろうか。先生が教室を出て、ホームルームが終わった。日本史の教科書、ノートを並べ、組んだ腕に顔を伏せる。しばらくして起きているか寝ているかわからなくなってきた時、チャイムが響いた。その音が終わるとともに次は日本史の先生の声が耳に入ってきた。  さっきより眠気は消えたものの、ほとんど先生の話は頭に入らない。昨日予習した範囲の教科書を適当に見て寝よう。あと30分もすればまた勝手に眠くなってくるだろう。  教科書のページを数十枚めくる。いくつかの人物写真を見つけた。改めて見ると歴史の人物というのは個性的な顔が多い。と、ある人物に目を奪われた。  俺の顔にそっくりだった。見れば見るほど似ている。他のページの人物写真も眺め、しばらくしてもう一度その写真を見直してみた。  もはや鏡と変わらない。俺の先祖は有名人だったのだろうか。そうして家系に思いを馳せていると、チャイムが鳴った。早速俺は席を離れ友人に教科書を見せた。 「なあ。この人俺に似てないか?」  友人は一瞬怪訝な顔をしたが教科書に焦点を合わせると口元が緩んだ。 「ほんとだ。なんで今まで気づかなかったんだろ。すごく似てるな。ドッペルゲンガーじゃね?」  友人はドッペルゲンガーとは何か知らないらしい。その後の授業もそのことが頭を離れなかったが、昼を過ぎたころには忘れ、帰ってからどうするかを考えていた。
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