第三者

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 午後の体感時間は長かった。ほとんど寝ていたが。何にせよ今日も授業が終わった。明日が週末の金曜日ということもあり、高揚しつつ学校を出た。帰り道、自販機で百円のジュースを買った。その場で飲み、辺りを眺め、乾いた道路、空き地、電柱を見ていると余計に喉が渇く。そのとき、電柱に貼ってあった選挙のポスターに目が留まった。例の写真を思い出した。何か煩わしく感じ、早足で家に向かった。  家に着くと、鞄を開け廊下に教科書を置き、もう一度その人物写真を見てみた。気になっていたことが何なのか気づいた。このページは今まで何度も見ている。なんでこの写真に気づかなかったんだろう。いや、この写真は見ていた。しかしこんなに似ているのに俺は覚えていないのか?  数分間思考をめぐらせ、やがて外の風の音が気になりだした。俺の記憶は曖昧だ。そう結論づけた。  リビングに入りテレビをつける。ニュース番組を無心で眺める。近くで放火があったらしい。詳細が語られ容疑者の顔写真が出た。  画面を見た瞬間、血の気がひいた。そこに写っていたのは、俺の顔だった。いや、違う。俺はこんな場所知らない。何かの間違いだ。その後連行される俺の顔、つまり容疑者が映った。ため息とともに血がゆっくり流れた。よかった。やっぱりそっくりさんじゃないか。いや何を考えているのか。こんな自覚のないことを俺がしているわけがない。  息が荒くなっていた。さっきの自分が恐ろしくなった。自分がしたことと思えるほどその顔は似すぎていた。しかし時間とともに呼吸は戻り、安心感を得た。  息を吐きながらその場に転がった。そういえば今日の朝はずっと寝ようと思ってたんだっけ。数秒と経たないうちに意識は消えていた。
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