思い立ったがなんとやら

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魔王は宰相の用意した服に袖を通した。素材は麻でごわごわとした感触がする。薄茶色のヒモで袖や腰回りを絞って調整できる、この城より南にある人間が住む地域では一般的な服である。しかし、魔王の白すぎる肌に、目立つ長い銀髪には不釣り合いだった。 「角は隠すとして、この髪の色も目立ちすぎる。さて、何色にしようか。あのあたりは金や茶が多かったな。では金色にしてみるか」 魔王が指をこぎみ良くならすと、銀色の髪は一瞬で金色になり、両方にあった水牛のような角は消えた。 「お見事です。で、今から出発なさいますとして、いつ頃お戻りですか?いくら平和だと言っても、王が不在が続くのは少々困ります故、早期に戻っていただきたいのですが…」 「何を言っておるのだ。宰相、何のために2着用意したと思っている。おまえも一緒に来い。幸い、オマエの茶色い髪と目はその辺にいるから角を隠すだけで十分であろう」 魔王は宰相の頭に手をかざすと、宰相の細く長い角は魔王の角と同様に消えた。 「わ、私もですか!?…いや、その、私は忙しいですので…」 「わかっているだろう、断る権利などない!」 「りょ、了解しました」 宰相はしょげて、さらに身体をちぢ込めた。
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