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「異常はなし・・・と」
探索に向かった二人は大通りから反れ、小道に足を運んでいた。
しかし、その視界に敵の姿はなく、封鎖区域となったゴーストタウンの静けさが辺りを包んでいるだけだ。
「北端からは攻めて来る確率は低いんじゃないか?
別に理論とかはねぇけどさ」
「ん~、どっから攻めてくるとかは関係ないだろ。用は倒せばいい」
淡々と小道を進む二人は、いつものように何げない会話を交している。
まだどこからも戦闘の気配は感じられず、セラフィムが攻めてきた傾向はない。
「でも実際、どれだけ強いんだろうな。目の前で見たことないからよ」
「だな。アルカディアとの戦争も、俺らは本部待機組だったし。造力者を数人、相手にしただけだしな」
数人とは言っても、本部に到達してきた造力者達の大半をなぎ払ったのは彼らだ。
それなりに戦闘経験があり、能力も応用が効く。
大抵のことは、対処できる二人組なのだ。
しかし、今回は相手が悪い。
そのことを重要視していない彼らは、レンの言葉を無視して待機場所から離れていく。
少しして――
「ほ~う、二人で散歩か」
二人が進む通りにある二階建ての建物の上から、質のある声が響く。
それに反応した二人はとっさに振り向き、身構えてそこにいる人物を睨みつけた。
「いつも通り二人一組での行動か?大丈夫かねぇ・・・そんな余裕ぶっちゃって」
現れたのは黒髪のオールバックに空色の瞳を持つ男、テリー。
「ま、ここらはまだ本部から遠いし、手薄なのも頷けるが・・・」
言いながら飛び降り、二人の前方に着地する。
「主力が一人もいねぇってのは、さすがに予想外だ」
テリーの瞳が、不気味な笑みと共に輝きを帯る。
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