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~四季咲花燐の場合~
私は目を覚ました。
しかし、そこは見慣れた自分の部屋ではない。
だいたい、ここは何処なの?
私が居る部屋は三方向が窓すらない無機質な白い壁に囲まれていて、唯一、私の正面の壁がガラス張りで、言い表すなら、そう、動物園の檻。
ガラス張りの壁の奥に見えるのは六つほど大型モニターや私には意味の分からない機械類。そして、それに向き合う白衣の男と女。ここは研究所のようだ。
その二人の方に向かおうと立とうとするが、うまくいかず倒れてしまう。
何で、こんなに手足が重いの。
疑問を抱き、体を起こして、自らの右手に視線を移す。
すぐにそれを後悔した。
そこにあったのは見慣れた自分の腕ではなかった。
それどころか、人間の腕ですらない。
太さは大きな熊のそれほどあり、色は漆黒、見た目の感じからゴツゴツしていて岩のよう、指先は鋭く切り裂く鋭利になっている。
明らかな異形の腕――
それが私の肩から生えていた。さも、当たり前のように……
力を込めれば、指先が私の思い通りに動く。
これが・・・私の腕・・・
僅かな奇跡を祈って、左腕も見る。
しかし、もちろん、状況は変わらない、左腕も一緒だった。
そして、足も多少の形状に違いはあれど同じだった。
そんな現実を脳は理解してくれない。
私は悲鳴を上げることも出来ずに立ち尽くしていた。
何デコンナコトニ……
昨日まではこんな事にはなっていなかったはずなのに。
これじゃあ、まるで、《バケモノ》
そう思考した瞬間、強烈な飢えと乾きが襲ってきた。
それは私達が普通に生活している限り感じることの無い、感覚。
鋭い爪を持った生物がまるで、胃の内側から引き裂いているような飢え。
とてもじゃないが、立ってられず、私は床に手を付く。
息が出来無い。
意識が朦朧とする。
怖い。
私はどうなったしまうの?
怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い――
そして、私が朦朧とする意識の中、最後に見たのは赤い警報の表示が出たモニターの前で何かの対処に当るあの白衣の二人だった。
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