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「これは、これは……」
現場に到着した橘は、目を丸くしていた。
住宅街に面した道路から駐車場にかけて、散乱した自動販売機の残骸は、ここで繰り広げられた死闘の痕跡であったが、それを知らぬ者達にとって、真に不可解な現場であった。
「遠山さん、いったい何が、起こったんだろう?」
近くにいた鑑識係に尋ねるが、首をひねるばかりで返答がない。
暴力団の抗争だって、こんなに派手にはならない。
「橘さん、自販機を壊したのは、これみたいです」
他の鑑識員が透明な袋に入れた証拠品を橘に示した。
採取されたのはピンポン玉より一回り小さい銀色の鉄球だった。
「こんなもので、自販機が壊れるもんなんですか?」
橘が疑問のまなざしで問う。
「高速で射出されたようですね」
自販機にめり込んでいた部分を指して、遠山が言う。
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