突然です、別れ

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「………………」 リムジンは既に発進してしまい、追い付くことは出来なさそうだ。 政宗さんを警戒しながらゆっくりと立ち上がる。 たった今放たれた蹴りは、きっと僕に避けさせるために手加減された蹴り。 そうでなければ、死角から放たれた政宗さんの蹴りを避けれるはずがない。 「……どうして……なんですか? 政宗さんは理由を知ってるんですか?」 「………………」 しかし、政宗さんは答えてはくれない。 「政宗さん……!」 「……ごめん、俺の口から言うことは出来ないんだ」 目を伏せ、悲痛な面持ちで政宗さんは告げる。 「……話して、くれないんですか……!」 ギリッと拳を握る手に力が入る。 どうして? 何故? 僕は玖遠と別れなければいけない? 玖遠は一体何処へ? これから何が起こるというの? 僕は知ることを許されないの? お腹の奥底から溢れ出てくる疑問と困惑。 そして、憤怒。 「……教えてください」 「真君、落ち着いて。怒気が駄々漏れだよ」 「教えて、ください……!」 「………………」 政宗さんが目を細める。 いつもはニヤニヤと笑いながら玖遠をからかう政宗さんはいない。 それは、天院寺家隠密部隊隊長の本当の姿。 「ちょっと……頭を冷やした方がいいかもしれないね」
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