十五章

38/38
8169人が本棚に入れています
本棚に追加
/490ページ
「でしょうね。この前ので理解しましたから」 「ふんっ。あの時は他の奴らに興を削がれたが……」 「開封『黒鎖』」 男の話しが終わる前に、絢は札を投げた。 三方向から男を囲む位置に浮くと、札に穴が現れ、黒い鎖が男を拘束しようと飛び出す。 しかし、この魔法は以前使ったものだ。当然、男も黙って捕われるわけもなく、その場を跳びのいて鎖から逃れた。 「同じ技は通用せんぞ」 「…………」 ポーチの中に手を伸ばした絢だが、そこから札を取り出すことはなく。 そして何かを考えているのか、黙って俯いたまま動かない。 「絢さん!」 少し離れた位置で、虎熊の相手をしている秋巴が、絢の異変に気がつき声をかける。 「んふふ、なにをよそ見しているの? お前の相手はあたし」 姿勢を低くし、秋巴に足払いをかけた虎熊。 それを跳躍してかわそうとした秋巴だが──寸前で、虎熊の足が止まった。 「寸止め──がっ!」 宙に浮いて無防備な状態の秋巴の腹部に、虎熊の一撃が入る。浮いているため踏ん張ることもできず、彼女は一直線に、猛スピードで吹っ飛んでいく。 「あたし相手によそ見するから──、あれ?」 つう──と、虎熊の首を血が伝っていく。 うっすらとだが、彼女の首に切り傷がついていた。 「……いつの間に……?」 あの一瞬で首を切られた──?血を指先で拭い取ると、虎熊は、自分が吹っ飛ばした彼女の方を見る。 「……えっ」 「…………」 吹っ飛ばしたはずのそいつは、すぐ目の前にいた。 静かに佇みながら、そいつは鎌を振り上げた。 そして、振り下ろす。 「っ……なんで、お前、さっき確かに……」 切られた肩を押さえつつ、虎熊はそいつから距離を取る。  
/490ページ

最初のコメントを投稿しよう!