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「でしょうね。この前ので理解しましたから」
「ふんっ。あの時は他の奴らに興を削がれたが……」
「開封『黒鎖』」
男の話しが終わる前に、絢は札を投げた。
三方向から男を囲む位置に浮くと、札に穴が現れ、黒い鎖が男を拘束しようと飛び出す。
しかし、この魔法は以前使ったものだ。当然、男も黙って捕われるわけもなく、その場を跳びのいて鎖から逃れた。
「同じ技は通用せんぞ」
「…………」
ポーチの中に手を伸ばした絢だが、そこから札を取り出すことはなく。
そして何かを考えているのか、黙って俯いたまま動かない。
「絢さん!」
少し離れた位置で、虎熊の相手をしている秋巴が、絢の異変に気がつき声をかける。
「んふふ、なにをよそ見しているの? お前の相手はあたし」
姿勢を低くし、秋巴に足払いをかけた虎熊。
それを跳躍してかわそうとした秋巴だが──寸前で、虎熊の足が止まった。
「寸止め──がっ!」
宙に浮いて無防備な状態の秋巴の腹部に、虎熊の一撃が入る。浮いているため踏ん張ることもできず、彼女は一直線に、猛スピードで吹っ飛んでいく。
「あたし相手によそ見するから──、あれ?」
つう──と、虎熊の首を血が伝っていく。
うっすらとだが、彼女の首に切り傷がついていた。
「……いつの間に……?」
あの一瞬で首を切られた──?血を指先で拭い取ると、虎熊は、自分が吹っ飛ばした彼女の方を見る。
「……えっ」
「…………」
吹っ飛ばしたはずのそいつは、すぐ目の前にいた。
静かに佇みながら、そいつは鎌を振り上げた。
そして、振り下ろす。
「っ……なんで、お前、さっき確かに……」
切られた肩を押さえつつ、虎熊はそいつから距離を取る。
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