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そこは地下牢だった。何年も何十年も何百年も使われていない地下牢だった。
牢という牢は錆だらけで、隙間風が入る度に牢の扉をギィギィと鳴らす。
牢と牢の間にある通路には、白骨化した遺体が連なり、遺体の衣服は統一され、槍や鎧などの装備が傍らに落ちている事から全て番兵であったのだろう。牢や通路や天井に黒く酸化した血糊がこびりついている。
それは中々に異様な光景だった。
そして、地下牢の最奥。通路を道なりに進んだ場所。
そこには一際大きな牢があった。
その牢には一人の子供が刀を抱いて座っていた。
白髪の長い髪は牢の床を這い、纏う物はボロ絹一枚で、薄汚れ傷だらけの肌が露になっている。
『シロ、いつまでそうしているつもりだ?』
シロの頭の中でハスキーな女性の声が聞こえる。
「何がでござるか?」
『何がだと?
牢は開いてる。番兵はいない。お前を縛るモノも百年も前に潰えた。いつまでこんな所に居座る気だ?
外が怖いのなら私が守ってやろうか?』
「必要ござらんよ。そもそも大事な物は全てここにござる」
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