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「諦めきれねえ自分がいるんだよなあ。判っちゃいるんだけど」
隣にいる男は情けない声でそう言うと、枕に顔を押し付けた。
手元の煙草が危ないと言おうとしたが、眠そうではなかったので口をつぐむ。
まったく、どこまで正直なのか、呆れてものが言えない。
シーツの波間から抜け出し、男に背を向けて下着を身につける。
すると、彼が視線をこちらに向ける気配。
「な、亜由子」
呼ばれて、関口亜由子はゆっくりと振り返った。
4年前に別れて、それきりだった恭平。
髪型が昔とは違っても、その物おじしない強い瞳は変わらない。
「……なんや?」
「お前、何で俺と寝たの?」
空気の読めないところも、相変わらず。
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