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その日は、沖縄に大型の台風が直撃していた。
雨風は激しく、まともに歩けるような状況ではなかった。
傘なんてさして歩いたら、吹き飛ばされてしまいそうだ。
だから、みんなカッパを着ている。
その中を、雨風に逆らい30代くらいの男が走っていた。
ふと、立ち止まると叫びはじめた。
どうやら、誰かを捜しているらしい。
しかし、激しい雨風の音にかき消されてしまう。
一方では、5歳くらいの子供が海岸通りの防波堤の上で、標識の棒の部分に捕まったまま動けなくなっていた。
波は激しく防波堤にうちつけられる。
少年は必死にしがみついているが、子供の力と体力ではすでに限界だった。
少年は助けてと叫んでいるが、やはり雨風とさらには波の音にも消されて、声は届かない。
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