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急に何かに呼び戻されるかのように意識がはっきりしてくる。
周りのざわざわした声なども耳に入ってきた。
ゆっくりと目を開けると、そこは飛行機の中だった。
まだ、意識のはっきりしないのか、ぼけ~っとしている。
少年の名前を浅海愁一という、年は17だ。
「どうした?ぼけっとして」
愁一は声のした方へと、顔を向けた。
話しかけてきたのは、隣に座る山下潤平(17)だった。
潤平とは中学からの付き合いで、いわゆる腐れ縁ってやつだ。
「どうした?なにが?」
愁一はまだ寝ぼけているらしい。
「何がって、ぼけっとしてるからさ」
「ん~、なんだっけ…なんか夢見たような気がするけど、忘れた」
「忘れたって、どんだけだよ」
「いや、そんなこと言われても、夢ってそんなもんじゃん」
「まぁ、そうだけどさ」
その時、機内アナウンスが流れた。
「まもなく、当機は那覇空港への着陸態勢に入ります。シートベルトをしめて決して席から立ち上がらないようお願いいたします」
「お、もう着くのか。以外に早かったな」
「潤平、外見てみろよ」
窓から外を見ると、そこには透き通るような碧いコバルトブルーの海が広がっていた。
その碧い色の中に緑で覆われた島が点々と浮かんでいる。
俺たちは高校の修学旅行で、沖縄へと向かう飛行機の中だったんだ。
「おー、すげぇさすが南の島の海は違ぇなぁ」
「へぇ、俺にもちょっと見せてよ」
そう言うと潤平を乗り越え、窓の外を覗きこんだ。
愁一達の席の通路を挟んで、三つくらい斜め前の席には木村咲(17)と小川薫(17)が座っていた。咲は通路側へと顔を出し、愁一達の席の方を見ていた。
ふいに咲のブラウスの袖が引っ張られる。
「なーに、見てんの?」
「え?べ、別に…」
「もう隠さなくてもわかってるよ」
「え?え?な、何が?」
「もう~、とぼけちゃって」
「……そんなわかりやすかった?」
「うん、だっていつも愁一くんのことばっか見てるんだもん」
赤面する咲。
「でも、あたしには言ってほしかったなぁ」
「ごめん、なかなか言うタイミングが…ね」
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