『始まりあれば終わりあり』

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海で泳ぐのは初めてだった。 波でプールのようにスムーズには泳げないことも初体験。 知識として海水が塩辛いことは知っていたが、思わず飲み込んでむせ、それを体験する。 「バッカね~、海の水は飲みもんじゃないのよ」 オレンジ色のビキニ姿の千夏は、むせる令士を見て腹を抱えて笑う。 (このビキニという水着と下着の違いは何だろうか?) ふとそんな疑問が浮かんだ。 生地やら構造が違うことは理解できる。 男性用の水着と下着も似ているが全然違うのだから。 (つまり、大切なのは格好ではなく状況ということか) ある意味見せる目的の水着と本来見せることが目的ではない下着。 目的によって差が生じ―― (待てよ。確か、見せる下着とかがあるらしいが、あれはどうなる?) 徐々に波に慣れながら、令士はどうでもいい疑問に思考を巡らせていた。 「どうよ、令士。初めて海で泳いだ感想は?」 泳ぎ疲れての休憩中に千夏が聞いてきた。 「目が痛い喉が痛い口の中が塩っ辛い――だけど、不思議で中々捨てたもんじゃないな」 「確かに、ね。何で塩辛いのかとか、波って何故起きるのかとか、科学的には解明されているけど、知らない方が人生楽しめるかもね」 「お前は知ってる知らないに関係なく人生楽しんでそうだけどな」 「ありゃありゃ、手厳しい一言ね……」
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