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手を掴まれたままの歩は動けずにその場に立っていた。
ふと山崎の走っていった方を見ると、既に人影はない…
「はぁ…」
一つため息をつくと沖田を見る。
「総ちゃん…なんで邪魔したん?烝に聞いたけど…あんた恋歌いう女の子好きなんやろ?…せやったらわざわざ伝えんでも…」
歩がそう言うと沖田は少し哀しげに首を振った。
「確かに私は…恋歌さんが好きです。でも…?!ゴホッ!」
何かを言いかけいきなり口を手で抑え咳をしだす沖田。
止まる気配は無い。
「ゲホッ…ゴホッ!」
だんだん大きくなる咳、歩は慌てて沖田のもとへ駆け寄るが手で制されてしまった。
「総ちゃん……」
手で制されてしまえば背中を擦る事さえも出来ない。
歩はただただ沖田の咳が止まるのを待つしかなかった。
「ゴホッ………」
やっとの事で咳は止まり歩は沖田に近づく…
「総ちゃん…?」
咳は止まったと言うのに未だに口を手で塞いでる沖田に歩は話しかける。
「…………」
暫くして沖田は自分の口から手を離し、その手をじっと見るとギュッと握り締めた。
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