過ぎ去りし季節 2

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次の射撃はローランに届かなかった。 目の前の壁が攻撃を通さない。 魔力を付加し、更に壁を強固なものへと変化させた。 「これだけじゃないのよ?」 地面から棘を生やしニアに攻撃。 目の前の壁でお互いの姿が確認できないのに、正確に攻撃してきた。 銃身で防ぐが、衝撃が身体を襲う。 驚いている中、見えないローランから声が聞こえてきた。 「私の大地の調べは、大地の全てを自由に操れる。 大地に立っている以上、ニアが何処にいるのか……手に取るように分かるわ」 動き続けても次々に襲い掛かる棘。 銃に魔力を込めて先端を破壊しても、舞台は棘で覆いつくされていった。 このままでは舞台一帯が棘によって封じられてしまう…… 動くスペースが無くなれば、勝機はなくなる。 だからこそ防御に使う力は全て攻撃に回すことにした。 隠し玉など使わない、全力で戦う。 だからこそ、ニアもエルフだけが持つ特殊な力を最大限に使うことを決めた。 その為にはまず動く、動いて壁の配置を覚えることから始まった。 (あの壁は私からの攻撃を真正面で封じるためのもの。 二重三重に並べているはずだから……) 銃を発砲した。 予想通りのコース、予定通りに飛んでいった。 魔力を込め、強度を増した壁。 ローランは貫通するとは思ってもいない。 通さない自信はあった。 けれど、銃撃は思いもよらない所から飛んできた。 「うっ……」 見えないローランから呻き声が聞こえてきた。 どうやら、作戦は上手くいった様子。 やっとの思いで命中させる事ができた。 「そっか……ニアの『完全計算』を忘れてた」 完全計算 それがニアが持つ能力の名前。 集めたデータを計算し、即座に答えを導き出す能力だった。 ニアが集めたデータは壁の配置と距離。 そして、ローランから聞こえてきた声から推測した位置だった。 距離を測り壁の配置で角度を求める。 後はどの方角からどの角度で弾を当てれば、どこに飛んでいくのか計算。 跳弾による反射攻撃。 それがニアが辿り着いた答えだった。
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