プロローグ

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 僕は子供の頃から野球が大好きだった。 まだ小学生になったばかりの頃、父が珍しく野球観戦に連れて行ってくれた事があった。 当時は父の仕事が忙しく、また父も責任ある立場のある人間なので休日も出勤することはざらだった。 そんな父と一緒に過ごせることが嬉しくて、ものすごく喜んだのを覚えている。  初めてのドームは圧巻だった。見渡す限り人、人、人。 当時首位争いの激しかったチーム同士の対決で、注目の好カードだったらしい。 しかしあまりに広いそのドーム内が満員になるほどの状況はその頃の僕にとっては衝撃的で本当はここだけ別世界で僕は今知らない所にいるんじゃないかと思ったくらいだ。  はぐれないように父の手をしっかりと握って自分たちの指定された席を探す。 意外にもそれはすぐに見つかった。 父に促され席に座るとようやく落ち着いて辺りを見渡すことができた。 その広さ、人の数、どれもが今まで見たことのないもので驚愕の反面父とはぐれた時の不安が頭をよぎる。 子供心に何があっても絶対にはぐれないと強く誓った僕だった。 それから間もなく、丁寧な口調のアナウンスが試合開始の合図を告げた
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