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~序~ アヤカシとヒト
――妖(アヤカシ)とは。
人々に恐怖と厄災をもたらす霊的存在。
もしくは怪異だ。
逢魔が時は、様々な妖が群れをなして舞い踊る。
ありとあらゆる自然現象に、そして動物や植物に霊魂がやどって、不思議となって現れる事もある。
江戸時代を生きた者は、後ほど有名となる「百鬼夜行絵巻」や「百物語」を次々に生み出した。これはその時代の人々が妖の存在を信じ、畏れていたのを証明している。
年が経ち、大正時代。
文明開化以降、日本は新たな光を求め、次々へと変貌した。
豊かな自然は破壊され、それは同時に妖が好んだ闇をも、どんどん奪い去る……。しかし、完全に消滅した訳ではない。
豊かな自然で囲まれていた江戸時代の街並みは失われて、――現代。
まだ、彼らは人間のすぐ隣でひっそりと生き続けていた。
光に満ちた若者は、先祖達が畏れた妖に対して、恐怖心を抱く事さえも忘れてしまっている。
そして、もう一つ忘れ去られた存在が
災厄をもたらす妖達を裁き、制する“陰陽師”。
先代から受け継がれた家系は希少であり、妖と同様、末路を辿っている者だ――。
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