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(……あれ?この声って…)
嫌な予感がして、雀は目の高さまで布団を持ち上げた。
目の前に飛び込んで来たのは、滑らかな漆黒の髪と、萌葱の羽織。
目線を上げれば、よく磨かれた黒曜石の瞳とぶつかった。
「やっぱり山本さん!あんた魔王のくせに、何で下っ端を気にしてわざわざここまで来てんだよ!?」
「む?我は王だぞ。王ならば下の者を気にして当然だ」
「下っ端は否定しないんだな!」
雀は脱力して元のように布団に潜る。
王自ら下っ端を見舞いに来るなど聞いたことがない。
「……雀。すまぬ」
ポツリと、山本五郎左衛門が呟いた。
「我は別に主を下っ端とは思っていない。我は主も仲間だと思っている。だから…」
「…山本さん。別にそれは気にしてねぇ」
どうも論点がずれている山本五郎左衛門に、雀は仕方なく布団から顔を出す。
「あんたは魔王だろ?王様は普通、仲間の心配なんかしないで椅子にふんぞり返ってるものじゃねぇか?」
「何故仲間が苦しんでいる時に、我が楽をするのだ。その場合、我は仲間を助けるものではないか?」
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