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小犬のケンはある家に引き取られました。
『わーい わーい新しいお家だぁ』
元気いっぱいに尻尾を振って新しい飼い主にすり寄って行きます。
だけどただそれを煙たそうに見ているだけの中年の男性。
この男性は、ただ上司にせがまれて仕方なくケンを引き取っただけだったのです。
新しいお家はマンションでペット禁止。
うろつかれては困るからと、ケンはベランダに作った木の柵の中に軟禁されてしまいました。
散歩も飼い主の気の向いた時にしかさせて貰えません。
『ねぇご主人様、僕もっと遊びたい』
ケンはいっぱい吠えて飼い主に訴えかけました。近所迷惑だと思った飼い主は、感情に任せてケンを酷く蹴り飛ばしました。
「うるさい!!黙れ!!」
「キャン!!」
『いたい…いたいよぅ…』
「キューン…」
ケンの悲しい鳴き声だけが、夏空に響き渡りました。
そのうち、餌の時間しか外に出して貰えなくなったケンは耐えられなくなり、ある日遂に脱走を計りました。
外をブラブラ歩いていると一軒家で放し飼いにされている雌犬、ミサが目に留まりました。
正面玄関の解錠式の門は開けっ放しになっていて、ケンは中に入りミサに近づいて言いました。
『ねぇお友達になろ?』
『うん、いいよ』
二匹は狭い庭を所狭しと駆け回って遊びました。
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