3.知らないもの同盟

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「……佐山は、いじめが嫌いなのか?」 俺はいつかの佐山による質問を本人に返す。 「好きか、嫌いか、で分けるのは難しいかもしれませんね」 「……どういうこと」 返事は無かった。一緒に行動するようになっても、佐山がよくわからない奴であることに変わりはない。 俺は、嫌いだ。きれいごとではなく。いじめに抗うという意思が、俺を強く突き動かす。 アイはいまだに、あれこれと言葉巧みに俺たち二人をいじめに加担させようとしている。だけど、それをはっきりと断る力を俺は手に入れた。協力者の存在。佐山のおかげで、独りにならない自信を得た。 期末テスト一日目。教科は国語、理科、美術。 「佐山―、さっきのテストのさあ、亜鉛と硫酸の」 「ああ、化学式ですか? Zn+H₂SO₄→ZnSO₄+……」 「あ、まって、その時点で間違えたわ」 次に来る美術のテストに備えて教科書をめくる佐山。 そんな彼を眺めながら、やっぱりこいつ勉強できるんだなあ、と改めて感心する。 「ちょっと、二人の会話レベル高すぎー。平均点上げるのやめてよー」 教室の後ろで、那子たちと一緒に教科書を広げていたアイが、俺たちに声を投げかける。 圭輔の件が絡まない限り、アイの態度は今までと変わらない。それはターゲットが沙穂ちゃんだったときから同じだ。 「そっか。七人しかいないから、一人の点数が大きく平均に反映されるんだね」 面白いな。そう言って笑いながら、佐山は美術の教科書をまた一ページめくった。
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