9641人が本棚に入れています
本棚に追加
/260ページ
疑り深く野田を見遣れば、野田は爽やかに笑いながら肩を叩いてきた。
痛い。
「まーまー。急に天城が村瀬に懐いたのが気になってさ、本人に聞いてみたんだよ。真紀と一緒に。すると、なんて返ってきたと思う?」
「すまん、知りたくない」
「『オレは兄貴に一生ついてくって決めたんだよ!』とか素面で謎なこと言ってたんだけど、村瀬、天城に何した系?」
「何もしてない!!」
勝手にガリ勉ってカミングアウトしてきて、勝手に構って欲しそうにして、勝手に兄貴とか呼び出した馬鹿に俺が何かするか!
ん、待てよ。野田がこんなに天城のことを気にするってことは、もしや野田は天城のことを……爽やか×一匹狼(もどき)ですか、美味いぜ!
「村瀬が俺と天城で掛け算してるとこ悪いけど、ねぇから。一応つるんでる奴だから気になっただけだって」
「照れ隠し乙!」
「面倒臭いなー腐男子も。違ぇって。どっちかって言えば、俺、村瀬の方に気があるし」
「…………は?」
今こいつ何て言った、と固まった俺を見て、野田は噴き出す。
「ははっ」
「おま……、嘘を付くならもっと誤解なく付けよ!」
「まーまー。ほら、村瀬との方が話合うし。一緒にいて楽しいしな」
「まぁ……天城よりは」
「それ聞いたら天城泣きそー! ま、村瀬とは和田や田崎がいない時じゃねぇと、話し掛けられなくて困ってる分、今は存分に満喫しとこうと思って」
「? 何で話し掛けられないんだ?」
「あれ、気付いてない感じ?」
確かにサムや田崎と話してる時は、王道にたまに邪魔されるくらいしか他の奴話し掛けて来ないけどな。
アレか? ハブられてるのか?
と野田を見れば、野田は心底意外そうに俺を見てた。
「和田、近付くなオーラ出してるんだけど」
「……は?」
「田崎も、あれはあれで仲良く盛り上がるじゃん、村瀬とさ。それで入る隙くれてないから」
「え、……うん?」
「あの二人のガードキツくて、村瀬に話し掛けれないって奴結構いるの、知らない?」
「お……?」
「まぁ、それに。飯生やら何やらいつも村瀬の周りにいるから、なかなかゆっくり話せれないよなー」
今は俺いるし、と付け加える野田の言ってる意味がわからないが、とりあえずハブられてはないのか?
なら良い……いや、ガードって何だ。
野田に説明を求めるよりも先にコートが空いたらしく、野田に背中を押されて、結局はぐらかされた。
最初のコメントを投稿しよう!