婚約

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真剣な二人の会話に入ることが叶わず、詞子はやり取りを見ているだけだ。 何故こんなことになったのだろうか?と詞子は最早現実逃避するしかない。 「藤原 詞子さん、だったか?」 「は、はいっ……旦那様、なんでしょう?」 組長に名を呼ばれ、詞子は体が震える。 「コイツが婚約者になることに不満はあるか?」 鋭い視線を向けられ、詞子は仕方なく上目遣いで組長を仰のいた。 「え?あの、その……何故私が婚約者に……」 「不満か?」 組長に一睨みされ、詞子は首を激しく横に振るしかない。 「いいえっ!!光栄です。」 「そうか。」 「親父、いいか?」 「元よりお前が婚約者に選んだ女を反対はせん。」 詞子としては是非反対してもらいたいのだが、どうやらそう上手くはいかぬらしい。 「あの……私に拒否権は御座いませんか?」 「「不満か?」と聞かれて「光栄だ」と詞子は言っただろ?今更拒否出来ると思うのか?」 どことなく嬉しそうに見える若の言葉に、詞子は逃げられぬことを今悟る。 「若様……私は……」
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