序章

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高校最後の日、俺はある女の子に告白された。 何故卒業式などという、微妙な時に告白するのだろう。 どうせならもっと早くしてほしかった。 そうしたら昼休みもむさい男共の顔を見ながら食すこともなかっただろう、 言わば薔薇色の学園生活が過ごせていただろうに。 こんなことを言うと誤解されそうだから言っておく。 高校生活、一度も彼女がいなかった訳じゃない。 それでも指折り数えられるくらいしかいなかったが。 それが多いか少ないかはわからない。 どちらかと言えば一人の女の子と永続きするタイプだったからだ。 俺はふたつ返事で了承した。 晴れてこの女の子と俺は恋人同士と言うわけだ。 聞けば彼女は俺と同じ大学に通うと言うし、女の子と付き合っているうちは花がある。 彼女は地味で目立たないタイプだ。 だがけして可愛くない訳ではない。 こういうタイプは自己主張が苦手がために、どうしても存在感が希薄になってしまうのだ。 そんな彼女が俺に気持を伝えるのにどれほどの勇気がいっただろう。 それを思うと、断るのも申し訳なかった。 この時俺は、彼女の名前すらも知らない。 恋人同士になるって、名前を知らなくてもなれるんだと、頭の隅で考えた。
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